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佐賀地方裁判所 昭和50年(ワ)140号 判決 1978年8月30日

原告

下村治男

ほか一名

被告

佐賀日産自動車株式会社

主文

1  被告佐賀日産自動車株式会社は、原告下村治男に対し金三二二万四九〇四円、原告下村初音に対し金二九六万〇九〇四円、及びそれぞれに対し、右各金員に対する昭和四九年五月二三日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告楠田秀雄、被告楠田フヂヨは、原告下村治男に対し各金一六一万二四五二円、原告下村初音に対し各金一四八万〇四五二円、及びそれぞれに対し、右各金員に対する昭和四九年五月二三日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3  原告らの被告らに対するその余の各請求は、いずれもこれを棄却する。

4  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告ら、その余を被告らの各連帯負担とする。

5  この判決の第一項及び第二項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原告らの請求の趣旨)

被告佐賀日産自動車株式会社(以下被告会社という)は、原告下村治男(以下原告治男という)に対し一〇二〇万円、原告下村初音(以下原告初音という)に対し九八〇万円、及びそれぞれに対し右各金員に対する昭和四九年五月二三日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

被告楠田秀雄(以下被告秀雄という)及び被告楠田フヂヨ(以下被告フヂヨという)は、それぞれ原告治男に対し五一〇万円、原告初音に対し四九〇万円、及びそれぞれに対し右各金員に対する昭和四九年五月二三日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言。

(被告会社)

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決。

(被告秀雄及び被告フヂヨ)

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決並びに被告ら敗訴の場合仮執行免脱の宣言。

第二当事者の主張

(原告らの請求の原因)

一  楠田慶四郎(以下慶四郎という)は、昭和四九年五月二二日午前二時一五分頃、佐賀県佐賀郡久保田町大字久保田字下満三六二の一武石商店前において、普通貨物自動車(佐四四す六五二九、以下被告車という)を運転して進行中、道路右側端に停車中の大型貨物自動車に衝突し、被告車に同乗していた下村竹治(以下竹治という)は即死した。

二  被告らは次のとおり原告らの損害を賠償すべき責任がある。

(一) 被告会社は被告車の保有者であるから自賠法三条による責任。

(二) 右事故は、慶四郎が被告車を時速約九〇キロメートルの高速度で運転し、ハンドル操作を誤り被告車を道路右側端に暴走させた過失に基因するもので、慶四郎は民法七〇九条により賠償責任を負うものであるところ、同人は右事故により死亡し、被告秀雄及び同フヂヨは、慶四郎の父母で同人の損害賠償債務を各二分の一宛相続した。

三  原告らは、竹治の父母で同人の死亡により同人の被告らに対する損害賠償請求債権を各二分の一宛相続し、原告らの本件事故による損害は次のとおりである。

(一) 竹治の逸失利益 各二〇六〇万三、一二八円

1 竹治は、昭和二八年二月二七日生で本件事故当時二一歳であつて、その就労可能年数は、六七歳まで四六年間である。

2 竹治は、原告初音と共に一万八、九五九平方メートルの田を耕作して米作に従事し、年平均米一九〇俵の収穫を得ていた。原告治男は病弱のため就労不能であり、原告初音は農業機械の操作ができず、かつ家事に専従していたから、竹治の米作収入に対する寄与率は五〇パーセントを下らないものである。各年度の一俵当の米価は、昭和四九年度一万三、四九一円、同五〇年度一万五、四四〇円でホフマン係数〇・九五二三を乗ずれば一万四、七〇四円となり、同五一年度一万六、四三二円でホフマン係数〇・九〇九〇を乗ずれば一万四、九三七円となり、同五二年度ないし同九五年度については、同五二年度の一万七、〇八六円にホフマン係数二〇・八〇二七を乗じた三五万五、四三五円とすべきである。そこで、米作に要した必要経費率三〇パーセント、竹治の寄与率五〇パーセント、世帯主的立場にあつた同人の控除すべき生活費率四〇パーセントを基準に、米作における竹治の四六年間の逸失利益を算定すれば、(13,491+14,704+14,937+355,435)×190×0.7×0.5×0.6=15,902,823円となる。

3 竹治は、原告初音と共にのり養殖に従事し、昭和四九年度においては、建込網数一七〇枚で四〇〇万円の水揚高があり、佐賀県におけるのり養殖の必要経費率が三二ないし四四パーセントであるからその最高の四四パーセントの経費が要したものとし、竹治の寄与率八〇パーセント、同人の控除すべき生活費率四〇パーセント、同人の就労可能年数四六年のホフマン係数二三・五三三七を基準に、のり作における竹治の四六年間の逸失利益を算定すれば、4000,000×23.5337×0.56×0.8×0.6=25,303,434円となる。

4 竹治の逸失利益は合計四一二〇万六、二五七円となるところ、原告らは各二分の一宛相続したから、原告らの相続分は各二〇六〇万三、一二八円(円以下切捨、以下いずれも同じ)となる。

(二) 慰藉料 各四〇〇万円

竹治は一家の支柱的存在の成年男子であつたから、原告らの慰藉料は各四〇〇万円が相当である。

(三) 葬祭費 四〇万円

成年男子の葬祭費は四〇万円が相当であり、原告治男が支出した。

(四) 過失相殺

竹治は、慶四郎外一名と共に飲酒の上、慶四郎が飲酒運転をしていることを知りながら被告車に同乗し、本件事故にあつたものであるから、竹治の本件事故における過失は三〇パーセントとするのが相当であり、被告らに対し請求し得る損害額は、原告治男において一七五〇万二、一八九円、原告初音において一七二二万二、一八九円となる。

(五) 弁護士費用 各五〇万円

原告らは、弁護士である原告ら訴訟代理人に本件訴訟の追行を委任し、その報酬として各五〇万円を支払う契約を締結した。

(六) 損益相殺 各五〇〇万円

原告らは自賠責保険から各五〇〇万円の給付を受け、各損害に充当し、原告らの残損害は、原告治男において一三〇〇万二、一八九円、原告初音において一二七二万二、一八九円となる。

四  よつて、原告らは請求の趣旨記載のとおり被告らに対し連帯して、残損害のうち、原告治男において一〇二〇万円、原告初音において九八〇万円、並びに、右各金員に対する本件事故発生日の翌日から支払済まで年五分の割合による民事法定利率による遅延損害金の支払を求める。

(請求の原因に対する被告会社の答弁)

一  請求の原因一の事実中、大型貨物自動車の停車位置が道路右側端である点を否認し、その余は認める。右自動車の停車位置はドライブイン敷地内駐車場である。

二  同二(一)の被告会社が被告車の保有者であることは認めるが、次のとおり運行供用者責任を否認する。

慶四郎は昭和四九年五月二一日昼頃、自車を車検整備のため被告会社へ修理に出した際、「整備期間中自分の通勤に差支えるので、代車を貸して欲しい」と申し出たので、被告会社はこれを断つたが、同人は同日夕刻再び来て代車の貸与方を執拗に要求したので、被告会社はこれを拒み切れず、やむなく被告車を貸与し、同人に対しくれぐれも粗暴な運転などしないよう申し入れ、同人との間に被告車を通勤に使用し、遊興や無謀運転の用に供することはしない旨の合意が成立していたから、貸借の性質および法理上から見ても、当然通勤以外に使用すべきものではなかつたから、被告会社としては、後記の如く同人が深夜二時すぎまで友人と飲酒徘徊したうえ時速約一〇〇キロメートルの猛スピードで暴走するなど専ら遊興のため被告車を利用するなどとは予想し得なかつた。

しかるに、慶四郎は、竹治、古賀和人と共に、同日夜被告車を使用して各地を飲み回り、翌二二日午前二時頃まで佐賀市内と牛津町で飲酒後、再び佐賀市へ戻つて飲酒することにし、慶四郎が被告車を運転し時速約一〇〇キロメートルの高速度で国道三四号線を東進中、前記本件事故現場附近のカーブに差しかかつた際、右高速度と酒酔いのため運転を誤り、カーブを曲り切れずに中央線を越えて対向車線に逸走し、約一〇〇メートルスリツプした後、同車の後部が右側へ横滑りして回転し、対向車線からはみ出してドライブイン「牛ちやん」の駐車場に停車していた大型貨物自動車の前部に被告車左側を激突させ、被告車全体か折れ曲り、潰れて原型を留めない程に大破し、衝突された大型貨物自動車でさえも修理費約六八万円相当の損傷を受ける程すさまじいもので、慶四郎の一方的過失によるものである。

被告会社は、慶四郎とは車検整備の依頼を受けた顧客としての関係以外には雇傭その他の支配・従属の身分関係はないので、同人を介して被告車の運行に影響を及ぼし得べき前提に欠けるし、まして、本件事故の態様のように通常予測し得ないような方法で運転する場合には、これを阻止し得る手段、方法がない。従つて、本件事故については、被告会社の被告車に対する運行の支配・利益は既に失われていたものとしてその責任は解除されなければならない。

三(一)  同三の事実中、原告らが竹治の父母で、同人の死亡により被告らに対する損害賠償請求債権を各二分の一宛相続したこと。竹治が本件事故当時二一歳でその就労可能年数は四六年間であること、逸失利益中、米作収入関係の必要経費率、竹治の寄与率、のり収入関係の水揚高、竹治の寄与率が原告ら主張のとおりであることは認めるが、その余は不知である。

(二)  原告らは、米作収入関係の昭和四九年度のホフマン係数を「一・〇〇〇〇」としているが、本件事故は同年五月二二日に発生したのであるから、ホフマン係数を初年度数値「〇・九五二三」とすべきであり、竹治の生活費を五〇パーセント控除するのが相当である。

(三)  原告らは、のり作収入関係において必要経費率を四四パーセントとしているが、原告ら方の昭和四九年度の各数値を求めると、水揚高四〇一万二、一六二円、のり網枚数一七〇枚、一枚当収穫量一、八二六枚が基本数値になり、のり網一枚当の収入は二万三、六〇〇円、支出は一万八、一九三円で必要経費率は七七・〇九パーセントとなる。

右必要経費率が極めて正確なものであることは、原告治男名義で表わされた原告ら一家の昭和四八年度課税所得と対比すると、見事に裏付けられる。即ち、右昭和四八年度課税所得は二一九万四、三五九円であるが、これを昭和四九年度の諸係数を参考にして同年度の所得を算出すると、二七一万〇、三〇三円となり、前年度を若干上回る程度で概ね一致する。これに反し、原告ら主張の必要経費率によつて算出すると、昭和四九年度の所得は四〇三万四、三〇三円と前年度の約二倍の数値となり、不自然な相違と言わざるを得ない。また、竹治の生活費を五〇パーセント控除するのが相当である。

(四)  以上の事実を基準に竹治の逸失利益を算定すると、

米作収入

粗収入額75,355,553×所得率0.7×寄与率0.5×生活費率0.5=13,187,221円

海苔作収入

水揚高4,000,000×所得率0.2291×寄与率0.8×生活費率0.5×ホフマン係数23.5337=8,626,513円となる。

(五)  原告らは、竹治が一家の支柱であつたというが、竹治は本件事故当時単身者であり、原告らにおいて、米作関係に五〇パーセント、のり作関係に二〇パーセントの貢献があるから、竹治を一家の支柱とすることはできない。昭和四九年度日弁連交通事故相談センター編損害額算定基準によつても、単身者の死亡慰藉料は六〇〇万円としているが、本件において竹治の寄与率が高かつたことを考慮しても、七〇〇万円を越えることはない。

(六)  以上の事実及び後記竹治の過失割合に基づき、原告らの残損害を算出すれば、四六〇万六、八六七円となる。

(請求の原因に対する被告秀雄及び同フヂヨの答弁)

請求の原因一、二(一)、(二)の各事実を認め、同三の事実中、原告らが自賠責保険から各五〇〇万円を受領したことは認めるが、その余は不知である。

(被告らの抗弁)

本件事故は、単に慶四郎だけの無謀運転によるものではなく、竹治、古賀和人が慶四郎の危険極りない飲酒、暴走運転をやめさせなかつたばかりか、さらに積極的にこれに加担して三名一体となつて遊興のために飲酒、暴走を敢行したものであるから、本件事故の招来については右両名も慶四郎と同程度の過失責任を負担すべきであり、慶四郎が被告車を運転していたことを考慮すれば、慶四郎には少くとも五〇パーセントの割合による過失があるというべきである。

(被告秀雄及び同フヂヨの抗弁)

被告秀雄は、香典二〇万円を原告らに給付したから、原告らの損害に填補されるべきである。

(右抗弁に対する原告らの答弁)

原告らは、弁論の全趣旨からみて明らかに争つている。

第三証拠〔略〕

理由

一  慶四郎は、昭和四九年五月二二日午前二時一五分頃、佐賀県佐賀郡久保田町大字久保田字下満三六二の一武石商店前において、被告車を運転して進行中、停車中の大型貨物自動車に衝突し、被告車に同乗していた竹治が即死したことは当事者間に争いはなく、成立に争いのない甲第七号証、同第八号証によると、右大型貨物自動車は牛ちやん食堂横駐車場内に停車していたことが認められる。

二(一)  被告会社が被告車の保有者であることは当事者間に争いはなく、証人相島幸雄の証言によれば、慶四郎は自己所有の自動車を被告会社小城営業所に整備を依頼し、同営業所所員相島幸雄から同月二一日被告車を代車として貸与されて運転していたことが認められるから、被告会社は自賠法三条により原告らの損害を賠償すべき責任がある。

(二)  本件事故は、慶四郎が被告車を時速約九〇キロメートルの高速度で運転し、ハンドル操作を誤り被告車を道路右側端に暴走させた過失に基因するものであり、慶四郎は民法七〇九条により賠償責任を負うものであるところ、同人は右事故により死亡し、被告秀雄及び同フヂヨは慶四郎の父母で、同人の損害賠償債務を各二分の一宛相続したことは、原告らと右被告両名間に争いはない。

三  原告らが竹治の父母で、同人の死亡により被告らに対する損害賠償請求債権を各二分の一宛相続したことは、原告ら及び被告会社、被告秀雄間において争いはなく、被告フヂヨは右事実を明らかに争わないから民事訴訟法一四〇条一項により自白したものとみなすべきであり、成立に争いのない甲第一号証、いずれも原告本人治男尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第四号証、同第五号証、同第六号証、成立に争いのない甲第七号証、同第八号証、右尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一二号証、原告らと被告会社間においては成立に争いなく、原告らと被告秀雄及び同フヂヨ間においてはその方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第一三号証、いずれも成立に争いのない乙第三号証、同第四号証、同第六号証、証人古賀和人の証言、原告本人治男尋問の結果(後記措信できない部分を除く)、弁論の全趣旨によると、本件事故による原告らの損害は次のとおり認められ、右認定に反する右原告本人尋問の結果の一部は前掲各証拠に比照して措信できず、他に右認定を覆すにたりる証拠はない。

(一)  竹治の逸失利益

1  竹治は昭和二八年二月二七日生で本件事故当時二一歳で、その就労可能年数は六七歳まで四六年間であり、そのホフマン係数は二三・五三三七である。

2  原告治男は昭和四六年三月末頃から脳動脈硬化症により就労困難であり、竹治は原告初音と共に昭和四八年度において一万六、八二八平方メートルの耕地で米作に従事し、一七〇俵の米を一俵当一万〇、五五一円の価格で出荷し自家保有米として一〇俵を収穫し、生産調整奨励補助金九万〇、〇三二円を取得し、その所得率は七〇パーセント、竹治の寄与率は五〇パーセントであり、竹治の控除すべき生活費を所得の五〇パーセントとすべきであるから、米作による逸失利益を算定すれば

(180×10,551+90,032)×0.7×0.5×0.5×23.5337=8,192,365円(円以下切捨、以下いずれも同じ)

となる。

3  竹治は原告初音と共にのり養殖に従事し、昭和四八年度の佐賀県におけるのり養殖者一戸当平均数値は、のり養殖施設数二〇八さく、水揚高八七七万円、経費三五五万一、〇〇〇円、所得率五六パーセントであるところ、原告ら方においては同年度ののり養殖施設数一七〇さく、水揚高四〇一万二、一六二円であるからその経費及び所得率を求めれば、前者は二九〇万二、二五九円、後者は二七・六六パーセントとなり、竹治の寄与率は八〇パーセント、竹治の控除すべき生活費は五〇パーセントであるから、のり養殖による逸失利益を算定すれば、

4,012,162×0.2766×0.8×0.5×23.5337=10,446,741円

となる。

4  竹治の逸失利益は合計一八六三万九、一〇六円となるところ、原告らは各二分の一宛相続したから、原告らの相続分は各九三一万九、五五三円となる。

(二)  慰藉料

竹治の年齢、単身者であつたこと、原告ら方における地位等を考慮すれば、原告らの竹治死亡による慰藉料は各三五〇万円とするのが相当である。

(三)  葬祭費

竹治の葬祭費としては、前記竹治の事情を考慮し、四〇万円とするのが相当であり、原告治男において支出した。

(四)  過失相殺

竹治は、慶四郎外一名と共に佐賀市内において飲酒の上、慶四郎が飲酒運転をしていることを承知しながら被告車に同乗していたものであるから、竹治の本件事故における過失は四〇パーセント、慶四郎のそれは六〇パーセントとするのが相当であり、右過失を相殺すれば被告らに対し請求し得る損害額は、原告治男において七九三万一、七三一円、原告初音において七六九万一、七三一円となる。

(五)  損害の填補

原告らは、自賠責保険から各五〇〇万円の給付を受け、各損害に充当したから、原告らの残損害は、原告治男において二九三万一、七三一円、原告初音において二六九万一、七三一円となる。

(六)  弁護士費用

原告らは、弁護士である原告ら訴訟代理人に本件訴訟の追行を委任し、本件訴訟の経過、認容額等から考慮すれば、右各損害額の一〇パーセントを本件事故と相当因果関係にある損害である弁護士費用として認めるのが相当であり、原告治男において二九万三、一七三円、原告初音において二六万九、一七三円となる。

(七)  原告らの被告らに対し請求し得る損害額は、原告治男において三二二万四、九〇四円、原告初音において二九六万〇、九〇四円となるところ、被告秀雄及び同フヂヨは、前記のとおり慶四郎の右損害賠償債務を各二分の一宛相続したから、右両名は原告治男に対し各一六一万二、四五二円、原告初音に対し各一四八万〇、四五二円の支払義務があり、右範囲内においては被告会社と不真正連帯債務として連帯支払の義務がある。

四  よつて、被告会社は、原告治男に対し三二二万四、九〇四円、原告初音に対し二九六万〇、九〇四円、被告秀雄及び同フヂヨは、原告治男に対し各一六一万二、四五二円、原告初音に対し各一四八万〇、四五二円並びに被告らは右各金員に対する本件事故発生日の翌日である昭和四九年五月二三日から各支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払義務ある限度において、原告らの被告らに対する本訴各請求を正当として認容し、その余の各請求はいずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用し、被告秀雄及び同フヂヨが申立てた仮執行免脱の宣言は相当でないからこれを却下することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 河原畑亮一)

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